たいていのコンサートホールや市民会館に備わっている三点吊り装置、リモコンで高さや位置を自由に動かしてマイクをベストポジションにセットできる大変便利な装置ですがなんとこれを現在作っているメーカーはヤマハのみで、海外ではほとんど導入されておらずこんな便利なものがそこらじゅうにあるのは日本だけだそうです。
この三点吊り装置、マイク自身にXLR端子がついていれば基本的にどんなマイクでもセットすることができます。宅録で使うようなマイクでも、吊ろうと思えば吊ることは可能です。
とはいいつつ、ある程度定番のものはあるのでご紹介します。
昔からある市民会館などでは、三研マイクロホン社のCMS-2というマイクが導入されていることが多いです。通常、ステレオ(左右で広がっている音、通常耳にする録音された音楽はほとんどすべてステレオです)で収録する場合にはマイクが2本必要なのですが、このマイクは1本でステレオ収録することができる優れもの。三点吊り装置を地上に降ろしてマイクをセットしたあとに上げるのですが、マイクを2本吊っているとその際に傾いてしまうこともありますが1本だと傾きも問題にならないので設置が楽ということで広まったのではないかな、と思います。
新しめのホールでは、DPA Microphones社の4006というマイクが導入されていることもあります。これは元々測定機器メーカーであるBrüel & Kjærから測定用マイクとして製造・販売されていましたが、空間で鳴っている音をそのままキャプチャしたかのような音色は「クラシック録音の定番といえば、これ!」という地位を築き上げています。
そのほかSchoeps社のマイクやAKG社、Neumann社のマイクなどを吊っていることもありますが(いずれも素晴らしい音色のマイクたちです)三点吊り装置にセットするマイクとしてはいずれも共通して「無指向性」と呼ばれる種類のものを使うことが多いです。
カラオケ店に置いてあるマイクなど、一般的(?)なマイクでは「単一指向性」と呼ばれる前方からの音を強くキャッチするのですが、無指向性は全方向の音を等しくキャッチするもので、残響音や拍手の音など、ホールで鳴っているありとあらゆる音を録音するのに適しているのでこのタイプのものを用いることが多いです。
ただ、単一指向性を吊ることは絶対にないか?というとそういうこともなく、無指向性に比べて音色感が明るいことや、また客席で発生したノイズを拾いにくいこと、楽器の輪郭が無指向性に比べてクリアになるなど利点もあるので状況によっては単一指向性をセットすることもあります。
なおケーエムワークスでは通常、三研マイクロホン社のCO-100Kという無指向性のマイクを三点吊り装置にセットしています。一般的なマイクは20kHz辺りまでしか収音できないのですが、このマイクは100kHz(!)まで収音可能で、CDよりも高音質なハイレゾ音源配信なども視野に入ってくる現代においては最適なマイクのひとつです。
