突然ですが、上の写真のようにレコーディングのとき、ドラムにはさながら集中治療室かのようにおびただしい数のマイクが立っています。「これ、こんなに必要なの?」と思われたりしませんか?
早速ですが、以下はドラムから1mちょっとくらいの位置に立てたマイクの音です。
いかがでしょうか? 全体的にぼや〜っとしていて、CDで聴くようなドラムの音とはだいぶ印象が違いませんか?
クラシック音楽など、響きを楽しむような楽器や音楽の場合ではこういった音もアリだったりするのですが、ポップスの場合はキレのいいサウンドが大切です。この「キレのいいサウンド」を実現させるために、ドラムの各パーツに個別にマイクを立てていった結果、この記事上部にある写真の集中治療室のような画になるわけです。
それでは、ふだんなかなか聴くことができない(?)各パーツに立てたマイク個別の音をご紹介します。まずはこちら、リズムの要であるバスドラムに立てたマイクです。
穴の中に入れたマイクは、ビーターが皮に当たった瞬間になる「バチッ」という音が録れるのですが、ミックス中に「もっと銅鳴りが欲しい」「低域感がもっと欲しい」という要望が出ることもあるので、バスドラムにはほかにも2本立てて録りました。
続いて、キックと同じくらいリズムの大切な部分を担っているスネアドラムのマイクです。
また、スネアドラムは裏側にスナッピー(響き線)が張られていて、ミックス中に「もっと響き線の音が欲しい」という要望が出る可能性もあるので、裏側にもマイクを立てて録りました。
残りのパーツのマイクも一気に並べていきます。
そしてこれらをいい具合にボリュームバランスを取って、音の定位を決めて、エフェクトでお化粧をしてあげるとこんな具合に。ここまでやってようやくCDで聴くようなサウンドになります!
各パーツだけの音だとちょっと生々しすぎる感じがあり、逆にアンビエンスの音だけだとぼやぼやしすぎていた部分がありましたが、混ぜ合わせることによっていい感じのドラム全体の一体感とキレのよさの両立ができるサウンドになりました。
今回の記事では計12本のマイクを使っていますが、エンジニアによってはもっと本数を立てる方もいたり、逆にもうすこし少ない方もいらっしゃいます。ドラムレコーディングはエンジニアによって個性が大きく出る、腕の見せどころです!
(ドラム演奏、写真提供:竹内大貴さん)